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花縄日記

花縄マスターによる日記(予定)

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道鏡の末裔 第二章

第二章
 「お松さん…どうなされました?」
 三時過ぎ、赤門から正門に向ってレンガ沿いに歩いていた謙孝の前
 に、女中のお松がいきなり街路樹の銀杏の影から顔を出した。
 「お姫(ひい)さまがお話が御ありだそうです」
 「はぁ!?…美子さま?がですか、…宜しいのですか!?こんな所
 でお姫様が男を待ち伏せして…」
 「分かっております…。ですから此処でまっておりました。お車の
 中にいらっしゃいますから、お話を聞いてお上げになってください」
 「私…執事の山下さんの許可を得て、谷中の実家に帰るところです
 から…、出来ましたら又の日に…(うるせ~ねぁ…あんな子供に付
 き合っている暇なんかね~んだよ!…。借金がかさんで金の工面に
 行かなきゃどうにもなんねぇ~んだ!
)」
 「それも解っております…。ですからお車の中で、私と運転手は外で
 待っていますから…」
 謙孝は母親そっくりのペチャンコ顔をした美子を思い出し、少々
 憂鬱になった…が、(あんまり約束の時間にぴったりと行くのも相手
 を図に乗せて良くないし…、少しは待たせていらいらさせる位が程
 よいか…)と思い直し、時間つぶしにガキの話し相手もイイと決め、
 お松に承知の返事をした。
 「お松さん、寺の父親が風邪を引いて寝込んだそうだから、私は
 出来るだけ早く帰りたいので…」
 「ハイハイ…、承知しております、…お話が終わりましたら、声を
 掛けて下さいね」

 「加賀美、お父様が風邪をお引きになったって…嘘でしょう?」
 後部座席から助手席に座った謙孝に、美子はいきなり声をかけた。
 それは今まで聞いた事のない美子の強い女の声だった。
 「わたくし何でも知っていてよ…」
 「はぁ~?…、何でも知っているって…、何をどう知っているのか
 知りませんが、私は何を知られても一向に構いませんよ!…。けど
 …おひいさまが知って得するような事は何一つありません!…」
 前を見詰めたまま、謙孝は微動だにせず、勝ち誇ったように言う
 美子の言葉を跳ね返した。
 「ま~無礼な!…」
 「無礼な事はありません!…ご存知ないかも知れませんが、私は
 自分から書生にしてくれ…と頼んで書生をしている訳では有りませ
 ん。お殿様から是非に…と、谷中の父にお話があったので、京都へ
 修行に行くのをやめてお屋敷に行っているだけです。…お姫様たち
 がどうお思いになっても御勝手ですが、私は貴方達の使用人ではあ
 りません!…、学費もいっさい頂いておりませんし…」
 目を合わせずにいる事が、美子のプライドを益々傷つけたであろう
 事を計算の上で、謙孝は言い放った。
 「ま~嫌なお人ね…、あなたには道徳心ってものがまるでお有りに
 ならないのね」
 「道徳心ならありますよ…。むしろ私を相手にしている人たちに
 道徳心と言うものがないから、私にも道徳心がないように見えるん
 じゃないですか!?…
。道端で男を待ち伏せしているような女に
 そんな事を言われたくありませんね!…」
 端正な横顔に涼しげな目で、身も凍るような言葉が飛び出し、美子
 は恥じらいと無念さに真っ赤になった、…が謙孝の透き通るような
 首筋と清潔なうなじを見て、胸が締め付けられる痛みに項垂れた。
 「美子さま、ご用が終わりましたら私はこれで失礼致します。今後
 もし私に用が御ありでしたら、直接おっしゃって下さい…、何時で
 もお待ちしております」 
 20mほど先でお松と運転手の中田がこっちを見ている。やっつける
 だけやっつけて置いて、謙孝はサッとドアを開けると優しい目つき
 で美子を眺め、にっこりと微笑んだ。
 別に計算しているわけではないが、いつも最後に優しい態度で相手
 に接した。知らず知らずの内にそうして生きる術を身に付ていた。
 (花の見頃は一時だ…、大いに悩め!…

 弥生町を右に曲がり池之端まで来ると、又右へ曲がり行き付けの
 旅館(出会い茶屋)までゆっくりと足を進めた。
 「謙さん…。今度逢う時は衣替えだね。すべて私が用意するから
 決して他の女から貰うなんて事はしないでおくれ!…、苦労して
 学問に励んでいる謙さんの面倒をみれるのが私の唯一の楽しみなん
 だから…。これだけ男前だから他に女を作るな…なんて言えないけ
 ど、お金と衣装の用意だけは私にさしておくれ…」
 呉服屋の女将からきつく言われて、今日が約束の日であった。早く
 済ませて、たんまりと御足を戴いたのでちょっと気が楽になった。
 「くれぐれも旦那に気付かれないように用心して、体に気を付けて
 …また7月に…」乱れ髪に垂れた乳房を出したままの女将に、謙孝
 は優しく言った。旅館に入った時とは見違えるような白絣を着て、
 真新しい夏の袴に着替え、下帯までも替えた謙孝は池之端を右に
 曲がり、切り通しを横切った。

 湯島下の陰間茶屋で天知光仁がくびを長くして待っている筈である。
 途中でミルクホールに寄り、温かいコーヒーを飲んで一息つき、
 約束より一時間ほど遅れて茶屋の木戸を開けた。
 呉服屋の女将とさほど年の違わぬ遣り手婆が、冷たい目つきで出迎
 えた。「お殿様が二時間も前からお待ちですよ!…、あんたも罪作り
 な人だね~…」この世の汚濁を知り尽くしたこの女も、底知れぬ魅力
 を湛(たた)えた謙孝には適わぬらしい。茶屋の売り子の誰よりも
 美しく、理性に富んだ瞳は謎だらけで、その上道鏡も驚くほどの逸物
 の持ち主だと言う

 「いつもお世話になっております」…と馬鹿丁寧に挨拶をされると、
 遣り手婆も振り上げた拳のやり場に困るほど「はい、いらっしゃい…
 いつもの離れですよ…」っと笑顔にさせられてしまう。

 離れと云ったって、飛び石を五つも踏めば格子の引き戸に入れる。
 謙孝は上がり框(かまち)の障子を開け、忍び足で次の間の唐紙を
 荒々しく曳いた。
 「うっ~…うぅ~」
 薄明かりの座敷から呻き声がした。すっ裸の男の影が浮ぶ。
 「あぁ…加賀美~…遅かったじゃないか…、また私を焦らそうとして
 わざと遅れて…うんぅ…」
 「お楽しみのようですから私は帰りましょうか…。お殿様…」
 「また~ぅ…そのような意地悪を言って…、私はこの日をどれほど待
 ちわびていたか…。今日こそ私の願いを叶えておくれ…」
 「では私は酒でも飲みながら、殿様のお遊びを拝見する事に…」
 「あぁ~良かった。お前が怒って帰ったら…と気が動転しました」
 「大丈夫ですよ、私は意地悪を言っても意地悪な事はしません。仏に
 誓っていますから…


 「お前は私たちの秘め事を覗き見していましたね!…、それも一度
 や二度ではない!…許しません!」
 何所で用意したのか、荒縄で亀蔵がぐるぐる巻きに転がされている。
 ヒステリックな声を上げて、光仁が衣紋掛けで亀蔵を叩いている。
 手拭いで猿轡をされている亀蔵は「う、う…」と呻くのみ。
 そうやって謙孝が来るまで愉しんでいたらしい。
 「え~い!…下男の分際で主人の寝間を覗き見するなど不届き千万
 !…くやしい~!!」
 見ると亀蔵に掛かった縄はずるずるに解け、亀蔵がその気になれば
 いつでも立ち上がれるほど弛んでいる。(ふ~ん、出歯亀めも愉しむ
 …か、中々面白~かも…)光仁の酒を呑みながら謙孝は微笑んだ。
 女のような甲高い声で叱責し、衣紋掛けを振り回すもんだから、急所
 に当たった時などは“ぎゃぁぁ~!”…っと亀蔵も本気で叫んだ。
 それが「うるさい!」と言いつつ、光仁が亀蔵の口にモンキーバナナ
 程のサオをねじ込む…。それを咥えながら、亀蔵はちらっ…と謙孝の
 方を見やり、何かを訴えるように身悶えている。
 (こんな猿芝居に俺が容易く乗るかよ!…。今に見ていろよ!…、
 二人共…男女郎に落してやるからな!…決して芝居じゃ味わえない
 責め苦を味合わせてやるぜ!…


 「あぁぁ…また女の匂いをさせて…、口惜しい…、亀蔵…加賀美の
 衣服を.片付けなさい!…」
 遊び疲れた二人が縄を解き、袴を脱いでくつろいでいる謙孝の方に
 すり寄ってきた。
 「おめぇ~達の猿芝居は面白くねぇ!…。足抜けした女郎の責めは
 あんなもんじゃねーよ!…。お殿様…あんたも女郎になりてぇーの
 かよ!…」
 「あぁぁぁ…そんな…女郎だなんて…。私が女郎に…あぁ~身の毛
 がよだつようなはしたない事を…」
 「亀蔵!…お殿様は嫌だって!?…、おめぇ~はどうだ!?…
 「…お、おらぁ…おめーさまの言う事なら何でもしますだ!…」 
 「お殿様…亀蔵はなんでもするそうですぜ…
 「あわぁぁ~…怒らないでおくれ…、お女郎だなんて…わたしは
 お女郎なんて知りませんし、なんで私が折檻されなきゃならない
 んでしょうか?」
 「バッキャロー!…大根役者みてぇーな小ざかしい芝居を打ちやが
 って、俺を舞台に乗せたきゃ~、頭を畳に摺り付けて頼み込め!…
 それでも解んなきゃ…おいらはけぇ~るぜ!…」
 「ここまで来て帰るだなんて…、私が悪かった…、お前の許しも
 得ないで亀蔵を折檻して…。…どうぞ私も亀蔵同様折檻しておくれ
 「おう!…始めっから素直にいやぁ~いいものを…」
 「あぁぁ~恥かしすぎて…女郎に成りたいなんて言えない…
 「うん、ま~そうだな…。でもお殿様…裸になりゃ~上も下もね~、
 女も男もね~!…。…今夜はたっぷりと俺も愉しませて貰うぜ!」
 「あぁぁ~私の永年の夢が叶うのですね…

 「亀蔵!俺の摩羅をしゃぶれ!…お殿様は亀蔵のケツの穴を舐めろ」
 「えっ!…私が亀蔵の…お尻の…毛むじゃらの穴を!?…
 「嫌なら何にもしなくてお殿様らしく、そっくり返って眺めて居ても
 誰も文句を言う者なんかいねぇ~んだから…。だけど…これから俺が
 亀蔵と愉しんでも何も文句を言うなよ!…、おい!亀!舐めろ!」
 「あぁぁ~それは私のモノ…」
 「ふざけんな!…これは俺のモノじゃ!…。女に入れようが、亀蔵に
 舐めさせようが、俺の勝手じゃ!…。これから先、一切お殿様に俺の
 体は触らせね~から覚悟しておけ!」
 (何か…下手な役者の台詞(せりふ)みてぇ~だな?
 謙孝は自分で言っているセリフに自分で噴出しそうになった。
 が、光仁には効果覿面であった。
 「お前に捨てられたら私は生きては行けない!…。お前の言う事なら
 なんでもします」
 立ち上がった謙孝を見上げて、光仁は泣き出しそうに懇願した。
 「よ~しっ!決まった!…まずは亀蔵!…縄を持って来い!…、こい
 つを真人間に仕込んでやる!…。亀!…俺がこいつを縛っている間
 じゅう…ずーっとこいつの乳首を責めたてろ!…」
 「へぃ!…お殿様の一番の急所ですね」
 「そ~だ!…身動きできね~ようにがっちりと縛り上げて、こいつが
 音を上げるまで…、こいつの望むように二人で遊んじゃお~…」
 「お、おいら…日頃の恨みを晴らしてぇ~!!」
 「そうだ!その意気だ!…、亀!…俺の摩羅ほしいだろ!?。後で
 たっぷりと可愛がってやるぞ!」
 何所でどうやって覚えたのか、謙孝の縄さばきは素早く、亀蔵に
 乳を嬲られて悲鳴を上げている間に、光仁の体は見事な亀甲に縛り
 上げられた。その上、光仁の頭をおさえ、膝ま付かせると、
 「お殿様…どうだ!…、これは囚人が刑場へ引かれて行く時、町中
 の人に見せしめの為に縛った縛り方なんだぞ!…、晒し者にされる
 気分はどうだ!?…

 と、言い放った。
 「ひぃ~!!…わらわは晒し者なのかぁ~!!
 「そーよ!てめぇ~みてぇ~なド助平~は、みんなに見られて笑い
 ものにされるんだ!…さ~…俺の摩羅を喉の奥までくわえろ!」
 「あっわっ!…うぐぅ…」
 うむを言わせぬ攻撃に、光仁の口は謙孝の太い摩羅でふさがれ、
 「亀!…こいつのケツの穴を舐め廻し、たっぷりと唾を湿らせろ!
 …おい!…亀が穴を舐めるから…腰を上げて足を開け!」
 「うぅごぉ…」頭を抑えられた口には太摩羅が入り、乳責めで悶え
 ている光仁は何ら抵抗する事なくケツを上げ、亀蔵に穴を開いた。
 「亀…しっかり唾を付けたら入れてやれ!…」
 「うほっ!…入れてもいいっすか!?…」
 「おっぅ!女郎に仕立て上げんだから誰のでも受けさせるぜ!
 「お殿様が女郎になるんっすか!?…あぁ…身震いがするぜ!
 謙孝は光仁に言い聞かせるように言い放った。光仁は尻を振って
 もがくが、縄が食い込み、息が出来ない状態では無駄であった。
 謙孝以外に受けた事のない尻穴は、やがて下郎に犯され、たっぷり
 精液を体内に注入される為に開きはじめた。

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                       第二章 終

道鏡の末裔

 
  道鏡の末裔(第一章)      作 北州 吉之介
 謙孝(かねたか)が子爵天知家の書生として雇われたのは十五の
 時であった。
 本来なら下僕として雇われ、風呂焚きや庭掃除など、使い走りと
 して、女中の下で働く使用人として雇われても何ら不思議のない
 境遇であった。
 にも係わらず、書生として雇われたのは、彼の持って生まれた類
 いまれな美貌の所為であった。
 十五年前、法龍寺の本堂に置き去りにされた乳飲児は、物好きな
 和尚によってそのまま育てられた。
 檀家の許しを得て、乳飲児は和尚の養子として入籍された。
 元より一人身の和尚は“天からの授かりもの”として、分身ででも
 あるかのように慈しみ育んだ。
 
 経文を枕に、袈裟を掛け布団とし、般若経を子守唄にして育った
 謙孝は、門前の小僧ならぬ門中の小僧として経文を唱え、小学校
 へ上がる前から和尚の後に就いて檀家を廻り、明晰な頭脳と態度
 で旦那衆の気に入られ、十二の時にはその美貌が評判を呼んで、
 根岸や谷中の女共の歓心を引き、彼岸や盆は和尚よりも彼を待つ
 ようすが有りありと表れ、和尚や旦那衆を戸惑わせた。
 謙孝が15歳で中学を終える正月、京都の大本山へ修行に行く事
 になり、青山にある天知家へ年賀の挨拶と、一年分の供養代を頂
 きに出向いた。後ろから付いて歩く謙孝はすでに和尚より背丈も
 体躯も大きく、墨衣の外からもその偉丈夫さは際立っていた。
 子爵のお殿様らしく口髭をたくわえた天知光仁(みつひと)は、
 書院造りの広間で平蜘蛛のように平伏した二つの坊主頭を見下ろ
 した。
 「ほー…これが例の捨て子か…
 謙孝の耳に光仁の第一声が聞こえた。微動だにしない和尚を横に、
 「はい、私が捨て子、加賀美謙孝です
 頭を畳に付けたまま謙孝は力強く答えた。

 その夜
 「謙孝、子爵様がお前を書生に…と言っております。寺の後継ぎ
 にと私は考えていましたが、無心の修行に行くか、書生として学
 究の道に進むかはお前が決めなさい。不慮の出会いでなった親子
 とは言え、どちらの道が良いかは判断の出来かねるところです。
 幸いな事にお前は明晰な頭脳と頑丈な体躯を授かりました。どち
 らの世界に行っても、他の誰よりも抜きん出た人間に成ると私は
 信じています。…中学の校長によると、数学と化学における理解
 力は特に素晴らしく、何とかして大学まで進ませて欲しいと言っ
 て来ています。貧乏寺ゆえ大学までの学費を檀家にねだる訳にも
 行かぬ、仏のお導きによって出来た親子の縁…」
 「和尚様、ご心配には及びません。私は決心致しました、子爵家
 の書生となって、世のため人の為に働きたいと思います」
 本尊釈迦如来坐像の前で対峙した親子の運命は瞬時にして決した。
 
 昭和二年、謙孝18歳。
 天知家の門内の桜は満開であった。花の重みで垂れ下がった枝を
 掻き分けるように黒塗りの車が門から出て行った。
 しばらく頭を下げたままかしこまっていた謙孝は、素早く門を閉
 めると玄関脇の自室に戻り、大きな体の手足を大きく伸ばし、大
 欠伸をして横になった。寝不足で頭が痛い…。
 「謙孝さん…。御前様がお風呂に入ると申しております。いつも
 のようにお支度をお願い致します」
 女中の竹子さんが引き戸の外から声をかけて来た。
 「ハイ、承知いたしました」
 生欠伸のまま言葉だけは丁寧に応えた。

 「湯加減はもういいから下がって良い!」
 湯殿の中から光仁が釜焚きの下男に向って苛立ちの声を上げた。
 窓を少し開け、下男が立ち去るのを確認すると
 「加賀美…何をしておる…」
 「ハイ、ただいま…」
 先程から脱衣所で衣服を脱いだまま、謙孝は風呂場の光仁の様子
 を窺がっていた…(もうそろそろ痺れをきらしてこっちに来るだ
 ろう…)。謙孝の思惑どおり、光仁は真っ赤な顔をして脱衣所と
 湯殿の仕切戸を恐る恐る開けた。
 「何をしておる?…、どうかしたか?…」
 真っ白な下帯び(褌)一丁でうずくまっている謙孝に向って光仁
 は猫なで声で聞いた。
 「…寝不足で少々頭が痛くて…」
 「あぁぁ~、そんなに激しかったのか…」
 「ハイ、一晩中私のモノをもて遊びまして…、一睡も寝かせて
 もらえませんでしたので…」
 「おおぉ…可哀想に…さぁ!…こっちに来てゆっくりと温まり
 なさい…」
 光仁はシミ一つない艶やかな謙孝の背中に触れ、ゆっくりと立ち
 あがらせる。
 と、謙孝は途中からすっくっ…と自分から起き、光仁の前に仁王
 立ちになった。それが合図ででも有るかの如く、光仁は謙孝の前
 に膝まづき、真っ白な下帯に頬を寄せた。
 「ああぁ…、この巨大なモノが徳子の汚らわしいボボの中を貫い
 たのですね!…」
 浅黒く引き締まった謙孝の尻に両手を廻しながら、光仁は悔しさ
 と羨ましさの狭間で涙を流し謙孝の褌を濡らした。
 「おい!褌が汚れるじゃねーかよ!」
 謙孝の一喝に光仁は涙に濡れた顔を上げ、己を見下している謙孝
 の、阿修羅のような美しい若者の顔に見惚れた。
 「はい!…(あぁ…私はこの下卑た男に下品な言葉で叱責されて
 いる…。…なのに、この震えるような歓びは一体何なのか…
)」
 光仁はいつまでも頬ずりしていたい未練と、この後にくる狂おし
 い程の歓喜に対する期待に崩れ落ち、謙孝の足に口付けをした。
 「バッキヤロー!…いつまでも女みてぇ~にぐっちゃぐっちゃし
 てね~で、さっさと湯加減でも見てこい!…。俺は疲れてんだ!」
 肩を蹴り上げられた光仁は飛び起き、湯殿に入ると、湯船に手を
 入れかき混ぜた。
 熱いぐらいが丁度いい、と言う謙孝の湯加減は、ぬるま湯好きの
 光仁の手がまっ赤になる程の熱さであった。
 つかつかっと湯船に寄ると、謙孝は光仁を跨ぎ、そのまま“どっ
 ぼ~ん“っと大きな湯船に褌のまま飛び込んだ。熱湯は跳ね返り、
 光仁は頭から湯をかぶりずぶ濡れにされた。
 沸かしたての湯はチリチリと謙孝の肌を刺し、その刺激が何とも
 云えぬ気持ち良さに酔いしれた。

 謙孝は本当に疲れていた。昨夜の所為ばかりではない。帝国大学
 への入学に納める金の工面で走り回り、昨日の昼は谷中の後家の
 所を訪ね、一時の寝間を過ごす羽目になった。だが決して金の要
 求をした事はない。袖を千切り、袴を破いては相手に繕わせ、貧
 乏を強調しては、後家の涙を誘い金品を出させた。

 (頼まれてもこいつ等(子爵家)からは金は貰わぬ!…。こいつ
 らが何と思おうと、俺はこいつ等の使用人じゃねぇ!
)っと謙孝
 は湯船に浸かりながら、「ふうぅ~」と溜め息をつき、湯船に思い
 っきり手足をのばし、腰を浮かせた。
 白い褌が水面に現れ、巨大な逸物がくっきりと透けてみえた。
 ちらっと光仁に目をやると、潤んだ目で頬を赤くして見ている。
 「お殿様…欲しいか?…」
 「はい…あなたのモノをお口いっぱいに含み…、そして…その後
 …お、おいど…の…穴に…入れられ…、あ~はずかしぃ~…入れ
 て戴きたく…」
 「お殿様…そんなに恥かしがる事はありません…。奥方さまも同じ
 ことをおっしゃいましたから…」
 「あぁぁ~…口惜しい事だ…。元はと言えばわたしが頼み込んだ事
 なれど…、徳子もこの巨大な逸物のとりこになって、わたし以上に
 身を焦がしておるのか…

 「…それでも欲しいか…」
 「ぁあ~、ください!…徳子の移り香を消して、早く私の中へ…」
 謙孝はゆっくりと湯船から立ち上がると、桶を枕に大の字に横たわ
 る。光仁は謙孝の足元に寄り添うように座ると、手にシャボンを付
 け、足の爪先から洗い始めた。
 駿馬のような艶やかに伸びきった若者の脚は上にいくほど引き締ま
 り、野生のオスの腰は筋肉が浮き出て、そのまま性器に集結して茂
 みから飛び出した巨砲は、太い青筋が渦巻き二つの卵をしたがえて
 股間に君臨している。
 「口で洗えよ!…」
 「あぁ…でも~徳子の匂いが…」
 「がたがた言うんじゃねぇーよ!…、嫌ならいいんだぜ!…、俺は
 何も好き好んで奥方の相手をしているわけじゃねーんだし…」
 「いやだなんて…そんな~、怒らないでおくれ、お前の言う事なら
 なんでもしますから…」
 謙孝の脅(おど)しに益々燃え上がり、光仁の尻穴はひくひくと
 蠢(うごめ)き、知らず知らずのうちに腰をふって、謙孝の顔色を
 伺っている。
 「いちいち手間かけねーでしっかりとしゃぶれよ!…、後で痛いっ
 思いをするのはオメェーだからな!…、自分のケツの穴にもたっぷ
 りと唾を塗りたくって滑りをよくしておけ!…」
 巨大な肉棒にしゃぶりついてもよい!…、と言うお許しが出たのだ。
 光仁の舌が内股からたっぷりある玉袋に至り、青筋の浮き出た巨根
 の根元から這い上がり、かり首を舐めまわし、鈴口に出た先走りか
 ら青臭いオスの臭いを嗅いだ。そのネットリとした透明な液はほろ
 苦く、切ない味で、光仁を狂わせるには充分な量であった。
 「あぁぁ~…」光仁は余りに圧倒的な男臭さに虚声を上げ、これか
 ら犯される自分の惨めさに酔いしれた

 張りのあるカリ首から徐々にくわえ込んで上下に頭を振って、光仁
 の口の中は呼吸が出来ないほどにいっぱいになり、それでもまだ半
 分にも達していなかった。
 「おえぇ!…」
 「おらぁ~!!…、しっかり元までくわえ込め!…。奥方はもっと
 奥までしゃぶるぜぇ…」
 「ぶはぁ…ぐえぇ~!!」
 光仁の顔は鼻水・涙・唾・涎があふれ、謙孝のサオをたっぷりと潤
 した。謙孝はゆっくりと上半身を起し、己の股間に夢中になってい
 る光仁を見下ろした。
 (こやつも可哀想なもんだ、生まれも育ちも申し分ない上に、体も
 がっちりとしていて、傍(はた)から観たら何も言う事は無いのに、
 逸物が並より小さくその上男好き…っと来ちゃ~、神だか仏だか知
 らね~が罪作りな事をするぜぇ~!!

 っと、わずかばかり仏ごころを起しながら眺めた。
 「よ~し!準備は良いようだな…、ゆっくりと俺に跨り腰を落とし
 て来い!」
 体格は同じようだが、骨の太さが違うのか、謙孝の方がガッチリと
 肩幅が広く、筋肉の塊のような腕が光仁を包み込み、上体を支える
 ように抱えた。消え入りそうな恥ずかしさで顔を真っ赤にして光仁
 は謙孝の腕につかまり、徐々に菊花を開き、腰を沈めて行った。
 「あぁぁ~…わたしの体が開いて行くぅ~!!…、こんなに大きい
 ものをわたしは受け入れようとしているぅ~!!…。あ~ぁ~あっ
 あっ~!!…入ってくるぅ~!!

 「おうっ…少しは慣れてきたようだな!?…お殿様!…、初めの
 頃は死ぬような声を出していたが、あれは何だったんだ!?…、何
 とか言えよ!」
 「あぁ~…たのむぅ~…それは言わないでおくれ…。はずかしくて、
 思い出しても恥かしくて…、あぁぁ~…頭の芯まで突付かれている
 ような…、入ってくるぅ~!!…あ~男が入って来る~!!

 背を反らせ、顎を突き出し、白目を宙に浮かせて光仁の尻穴はとう
 とう謙孝の巨砲を根元までくわえ込んだ…。
                  
 光仁が腰を使い出した。「おい!勝手に愉しむんじゃねえ!…」と
 言う謙孝の言葉が聞こえないのか、肉欲だけのメスと化した光仁は
 「あひぃ~!!…いいぃ~!!太いぃ~!!」
 とわめき、前かがみになっては謙孝に抱き付き、のけ反っては腰を
 使って上下に暴れまくっている。
 頃合を見計らい、謙孝の手が光仁の乳首をつかみ撫で上げた。
 「ひぃぃ~!!ダメ・ダメ~!!そこはだめ~!!」
 光仁は最大の性感帯を責められ歓喜の悲鳴をあげた。
 (後はおれが腰を使えば勝手にイクだろう…)っと思い…、
 ふと、何故か人の気配を感じ、湯船の上の小窓に目をやった。
 いつ頃から覗いていたのか坊主頭の亀蔵と目が合った。びっくりし
 たのか亀蔵の頭がひっこんだ。
 (どうせ又のぞき込むだろう…)と思い、ぐいぃ!っと腰を突き上
 げた。「うぎゃぁ~!…ダメェ~!!」目いっぱい伸び切った尻穴
 の筋肉を擦られ、光仁は直腸の耐えがたい刺激に意識が薄れてきて、
 全身の緊張がゆるみ、小水をもらし始めた。
 案の定小窓に坊主頭が見え、ぎょろ目の亀蔵が顔を見せた。
 謙孝は結合した所を亀蔵に見せ付けようと、徐々に腰を廻して小窓
 の方に光仁の尻穴を向けて、自分の巨根も“どうだ!”と、言わぬ
 ばかりに激しく腰を上下させて亀蔵に見学させた。
 「うわぁぁぁ~!!…だめ~!…死んじゃうぅぅ~!!」
 亀蔵が覗いているとは知らぬ光仁は屋敷中に聞こえるかと思うほど
 の声を上げ、自分の髪の毛をつかんで身悶えた。
 (亀蔵!良く観ろ!…人間と言う生き物を…、お殿様でもお姫様で
 も、裸になりゃ~みな同じじゃ!…

 しがみついて来た光仁を横抱きにして“ごろっ”っと寝返り、謙孝
 は上になると、光仁の足を大きく開かせて、カリ首から元まで出し
 入れを始めた。亀蔵の目に総てが曝け出されると、
 「ああぁぁ!!…ゆっくり…ゆっくり…やっておくれぇ~!!」
 女と同じ泣き声が謙孝を苛立たせる。
 (そろそろ年貢の納め時だな…)狂い泣きする光仁の声が擦れだし
 たので、窓の亀蔵をみると、目を真っ赤にして涙ぐんでいる。
 (???…)亀蔵のなみだの意味が解らぬまま、仕上げに入った。
 思いっきり光仁の腰を浮かせるように、謙孝は自分の腕を板の間に
 つくと、腕立て伏せのように全身を光仁の体に乗せ、深く浅く、浅
 く深く…と繰り返した。それはまるで沼地に杭でも打ち込むように、
 光仁の穴に苦痛と快楽の波を引き起こした。
 「あぐぅ~!…いいぃ~!…ダメぇ~!…いくぅぅ~!!」
 全身をふるわせた光仁の可愛い性器から白濁が飛び出し、己の顔面
 に飛び散ると、気が失せたように静かになった。
 謙孝はゆっくりと光仁の穴から凶器を引き抜くと、亀蔵の方に向っ
 て湯気の立ち昇る摩羅をこれ見よがしにしごいて観せた。
 “がたっ”っと倒れる音がして、台でも踏み外したのか、亀蔵が消
 えた。口を開け、腹を波打たせて光仁は気絶している。
                       第一章 終

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